ELITE BEAT AGENTS - スペースチャンネル 5 の思い出
難度 HARD の最後まで来た。何度見ても燃えるデモだ。応援団から EBA への最大のアップグレード要素は「イントロをスキップできるようになった」ことだが、最後のミッションはその日遊ぶ最初の一回はデモを飛ばさずに見てしまう。正しいなー、音ゲーと正しさってこんなにマッチするんですね、というつながりから、もちろんスペースチャンネル 5 のことが連想される。あれは金字塔だったということよな。EBA もその文脈上にあるタイトルと見てよい。もちろん EBA は、べつに SC5 だけでなく、いろんな音ゲーの文脈をまたにかけていると思えるけど。
なにがってまずダンスと入力の同期。エージェントのダンスの振り付けは、わりかしマーカーの軌跡に沿っている。うららのダンスもそうだった。タイミングを通して画面の向こうとつながっている感。次にパートが進むごとに増えていくバックダンサー。バックっていうか EBA の場合上画面で踊ってるひと。SC5 で楽しかったのは、進んでいくうちに救助したひとがどんどんうららの後ろにくっついてきてにぎやかになることだった。EBA ではあの感覚が取り入れられている。みんなが集まってどんどん楽しくなっていく。次にセオリーの構築。まあ一作目でやりきってしまったというような部分もあろうが、こういうゲームならこういうふうな起伏でだな、というような様式が SC5 にせよ EBA にせよ確立している。次にもちろん演出の馬鹿さ、そしてテーマの正しさ。「歌と踊りが(文字どおり)地球を救う」という完璧に正しいお題目。それを音ゲーとしてパーフェクトにやり遂げたのが SC5 のものすごいところだった。感動をもたらした。歌と踊りのゲームでだ。それを EBA もやっている。NDS の小さな画面で。半端なことをやっていたのでは到底地球など救えない。だから応援団も EBA もやることが半端ではない。徹底的に純化されているといっていい。洗練とは少し違う。泥臭い部分もある。あるが、それゆえに感じる魅力もまた力になる。
だが EBA は SC5 からひとつだけ学び損なったと思う。その一点だけがいただけない。ラストステージの難度設定に関することだ。これが EBA はきもちよくない。むずかしいのだ一番。ラストステージが、ゲーム中のどのステージよりも。そしてそれは地球を救うストーリー付の音ゲーの難度設計として間違っている。このゲームの難度は、ラストステージの一歩手前で最高難度に到達すべきだと思う。そしてラストステージは、あんまりむずかしくないのがいい。途中までは何度もミッション失敗してリトライしていいが、最後の最後は楽しんで一発でクリアできるべきだ。それはプレイヤに対する「いままでよく頑張った、これが最後だ楽しめよ」ってことでもあるし、またストーリーとの絡みでもある、つまり、一旦地球を救おうと試みられたとき、それはよほど間抜けな失敗をやらかさない限りにおいて、ほぼ間違いなく成功するべきなのだ。SC5 がすごいゲームだと思ったのは、最後の最後(といってもスタッフクレジットが終わったあとのアレではなく、クライマックスでのラストシューティングだ)のトライが初見一発でクリアできたときだった。あそこまで辿り着けるやつなら、あそこでしくじったりはしない。それがわかっていて敢えてそうなっている。この一発を間違いなく成功させるための、これまでのステージは伏線だったとわかった。むずかしくないのに緊張する。難度以外の要素が背中を押すからだ。ストーリーでありボルテージであり走馬灯であり、救うべき地球の重さだ。それを救う必要があるとき、それが救えないことなどあってはならない。そういったことを含めてゲームにしてしまった、というのが SC5 の偉大なところだったと思うのだ。
…というようなことを、ノリで一発クリアしかけて失敗し、そのあとリトライを繰り返しても進歩せずウガーとなりつつ思った。まあしかしこれ一応うっかり一発クリアしかけてるんだよな。あのままスルっと抜けられていれば最高の思い出になったかもしれない。HARD の最終ステージほんと楽しいし。後半無呼吸連打気味になるけど。これはこれでよさげでも…いややはり違うな。