THE LORD OF THE RINGS - THE TWO TOWERS
11 月中旬くらいから忙しくて買ったものや見たもののメモ作業が滞っている。これも先々週末くらいに DVD ボックスを買って、プロジェクタ&強まった音環境のある M さん家で見たのだった。
特に感想を記述しておく必要のないおなかいっぱい映像のかたまりなので(映画版からさらに追加パートが収録され、本編 3 時間 43 分になっている)、いまさらあれがよかったこれがよかったということはもう書かないでおくが、改めてよく見てみると原作→映像化の過程でふんだんに盛り込まれたその萌えポイントの多さに驚く。迫力とかスケール感とかはもちろんのこと、こういった部分での細かい愛の注ぎ方が、多くの極まった LOTR オタからも「まあ言いたいことは山ほどあるけど、そのへんは置いといて楽しんであげるよ」と好意的に評価されている理由のひとつと言えるだろう。
枝葉の感想のうちのさらにキャラクタまわりの部分だけメモ。適当に指走って書いているので無茶苦茶なことを書いている可能性あり。いきなり全然関係ないほかの作品に関する感想などが挿入されてるけどこれ実際見ながら書いたものなのでそんなかんじで。
- フロド
- 指輪ルートのモテモテ担当かつ翻弄され系萌えキャラ。
- 場の勢いに流されやすいけど芯はしっかりしているというおいしいアピール。
- そういえば森薫「エマ」のエマって役職はメイドだけど自己決定に関する立ち位置的には「女主人(≒女主人公)」なんだよね、だからドラマティックなんだ(変わっていく時代の自立していく女性像)。エマは一人称で自分の状況を受け止めている。フロドも似たような(物語上での)ズルい位置取りをしており、かつそれを一歩進めている。徐々に指輪に支配されつつもしかし抵抗し、流されながら見失いかけても取り戻し、かつ自ら危機へ近付いていく、問題を終わらせるために、フロドにはそれをすべしと指し示してくれるガンダルフが居た、ゴクリはそれを持つことができなかったからああなるしかなかった、ビルボの時代にも気付かれず彼にとっては手遅れになった、だからこれはフロドにこそ与えられる苦難。
- サム
- 癒し系萌えキャラ。
- 対ゴラム、対ファラミアと、フロドをめぐる三角関係にヤキモキするあたりが萌えどころ。デフォルトではダメ御主人様を適切にサポートするメイド的ポジションだが、ストーリーへの一歩踏み込んだ関与も可能な位置取りへのスライドなど、やはり凡百のキャラではない。こういうサムだからこそフロドの従者にふさわしく、ガンダルフの見極めは確かなのであった。がんばれサム、愚か者にこそ明日は来る、そう、未来はおまえのものだ。
- ゴラム / スメアゴル
- シリーズ最強の萌えキャラ。
- 三角関係の影側で無自覚系としてふるまい、かつ多重人格属性も兼ね備えるあたりのズルさというか悪辣な立ち居地が強すぎる。天空戦記シュラトのラクシュとかあれは単に脳みその足りない馬鹿キャラとして話をひっかきまわすだけだったので猛烈なブーイングを食らったものだったが、さすがゴクリたんの萌え外殻構築は見事なのであった ハァハァ。
- 「フロドたんも数百年ほっといたらこんなふうになる」という「ビフォアフロドアフターゴクリ」としての機能もあり、そこらへんで「運命に抗うフロド萌え」を補強する役目も負っている。しかもそのゴクリのヘタレ部分はしかしそれでも彼の精神が指輪の呪力によっても完全には堕落しなかった証左でもある、というあたりの設定的に皮肉かつ萌え萌えなところとかもうどうしたらよいのみたいなアレで。
- ファラミア
- いじわる担当。
- 原作とはまったく違うヘタレっぷりや、そこから転じて成長するいいひとっぷりがまた良い(でもゴラムには容赦ない)。ゴンドールの人間の強さと弱さは今作においてもフロド一行を翻弄するのであった(そして今作での彼の行動は結果的に次作でのゴラムの裏切りにも動機を与えてしまった)。
- あとおれ今回ファラミアがフロド一行を拉致して以降の展開を見ながら、妙に高橋留美子「めぞん一刻」を思い出していた。フロドを音無響子とし、サムを五代裕作とした場合の、三鷹瞬にあたる存在であるかのようなファラミアの振る舞い(いろいろちがうんだけどなんとなくそうおもったんだよ)。ファラ - フロ - サムの三角関係が健全に展開し、ファラ - フロ - ゴラムの三角関係が不健全に展開してしまったという非対称性がおもしろく、運命的なものをかんじさせる。
- 彼がメテオさん★くらい男らしい(?)キャラだったら映画版 LOTR の話はややこしい展開にならなかっただろうに…けどややこしい展開のほうがフロド&サムの萌えシチュエーションを加速的に展開させるわけなのでそれはそれなんだよなー、やっぱり三鷹。
- アラゴルン
- 王様ルートのモテモテ担当。
- モテ度でいえばもともと三部作最強キャラであって、しかもホビットではなく人間(映画視聴者の種族である)の代表的存在でかつ約束された人類の王なのだからそれはもうのべつまくなしモテてモテてモテまくってハーレム状態。この調子で運命と映画の女神までメロメロにしていっていただきたい。
- ギムリ
- 存在自体が癒し系。
- 今回アラゴルン一行はホビットとはぐれてるので、順番的に一番低身長となったギムリが癒し/萌えパートを一手に引き受けることになった。マラソン苦手、すぐ落馬、ワーグの下敷き(高橋留美子なら間違いなく「ぷぎゅる」の擬音を入れるところだ)、ジャンプできないから投げろ(FotR から引っ張ってるネタ)、ウルク=ハイへのきんたま攻撃など萌えどころ満載。特に鎖かたびらのサイズが合わないと不平をもらすシーンの映像的明快さなどはおれ内ドワーフ萌え袋がよじれる出来(←「おおきめセーターから指先だけ出してココア飲んでる妹属性」方面の刺激だ)。
- ただ、位置的に富樫&虎丸的存在として活躍しすぎて、キャラ的に若干損してるような気がしなくもない。
- レゴラス
- キャラ的には影が薄いのだが役者自体がフェロモンだしまくりの美男子なので奥様うっとり。
- エオウィン
- 木の髭
- 歩き方が「鉄騎」のVTっぽいなあと思った。
- 蛇の舌
- サルマン
- ピンで立ってるぶんには悪の大魔法使い度満点なのだが、蛇の舌と並んで立つといきなり三流悪役然としてしまうあたりは演出の魔力ってやつなのだろうか。
- ところで彼が爆弾を製造しているときに無知な蛇の舌が火薬に火を近付けて、それをガシっと止めるという演出が入るけど、この「はいこれは爆弾ですよー演出」ってたとえば「死霊のはらわた 3」とかでも見たよな。これのオリジナル(っていうのか?)てなんだろ。
- サルマン その 2
- サルマンは、現代の人間から見るとその物語への参加の仕方が最もわかりやすいキャラクタでもある。彼は運命とか宿命とかではなく自らの野望のために持てる能力を駆使して戦いをはじめた。アクティブ腹黒おやじ FX 的存在。魔法を手段として(科学的に)使い、アホな部下共を使えるように組織化し、偵察を怠らず、サウロンにおべっかを使い、リソースを消費して新たに強力な軍団を(文字通り)作り上げ、周辺勢力を弱体化させようと心を配り、攻城戦を見越して様々な兵器(爆弾やカタパルトやその他諸々の攻城戦兵器。外壁・内壁にかける鉄梯子などはきちんと塀の高さに合わせてあるなどサルマン氏の細やかな配慮が見られる)を考案・設計し、満を持してウルク=ハイ軍団をヘルム峡谷へ送り込んで…そして軍団が出払った隙を突かれてエント達に長年苦労して築き上げた新生アイゼンガルドを滅ぼされるのだ。
- あのダムが決壊してすべてが無に帰していく映像に対して、現代人のひとりとしておれは痛みを共感せずにはおれない。サルマン個人の費やした膨大な苦労、莫大な努力(条理のもの)が、運命とか物語とかそういった(不条理の)ものによって破壊される。ああ、そんな無茶な、そんな馬鹿な、やめろおまえらせっかくの。あのシーンで重要なのは自然←→反自然とかそういう生易しい問題などではない。サウロンの善悪なども関係ない。「意味に共感しうる」動機でがんばっているサウロンが、「(本質的に)意味に共感しようがない」動機で行動している連中にメタクソにやられてしまうという点だ。もちろん理屈はあるだろう、がんばりすぎてバランスを崩してそれが引き金を引いてしまった、なるほどまあそうだろう、それは正しいけどもしかし、サルマンは「エントを怒らせたから」やられたのではなく、「サルマンは負けることになっていたから」負けたのだ、という言い方もやはり可能なのだ。
- アイゼンガルドは予定的に瓦解した。惨状を見るサルマンの胸のうちや如何に。ぶち壊れた倉庫から最上級の煙草樽をみつけたメリーとピピンの高笑いは、たまたま運命の味方する側に居たというただそれだけの絶対優位に立つ彼らの、無自覚な嘲笑のように思えてならないわけなのだった。
とかなんとか。LOTR 萌え観についてはこのへんの図(http://halfway.parfait.ne.jp/data/2003/03/03.html)などがわかりやすい。