コミックマーケット 71 初日
C71 がはじまった今日、東京に住んでいるおれはコミケに行くこともできる。が行かない。もちろんそれは「コミケに行かない」という選択の結果ではなく、「コミケに行く」という選択をしなかった結果としてだ。あまり関係ないけど「なぜオタはコミケで徹夜するために前日夜半会場へ向かうときにだけ肩で風を切りますか?」というなぜオタを思いついた。ようするにおれが結局獲得しようと思うことがなかったのはあの姿だ。近所でコミケがあるというのなら自然と、遠くでコミケがあると聞いたら無理をしてでも、会場へ足を向ける習慣が根付かなかった。どのような理由であれコミケのために徹夜で並ぶというモチベーションは、(同人誌ゲットのためとか企業グッズゲットのためとかそれらを転売して得る金のためとか仲間と一緒に徹夜で並ぶという体験のためとか)なんであれ自分の内部から溢れてきているはずだが、おれはコミケに外部的な用事がある期間中に、その回路を作り出すことができなかった。用事を用事として淡々と消費し、それがなくなったらコミケに行く理由もなくなった。自分の情熱みたいなものは、自分にだけわかる方法で発散すればよいのだが、コミケ現役の若者のひとなど見かけると「なるほどこのわかりやすさは、これはこういうものとして得がたいな」とも思う。消費への欲望などというはっきりした理由では、肩で風切って歩く姿は説明できない。戦う前から勝っているようなイキイキした目つきもだ。そういう振る舞い、表情を得意とするようなひとでないのは一目でわかる。風の切り方も、イキイキの仕方もどこかぎこちないのだ。普段からそういう状態に慣れているひとではない。けども、ぎこちなかろうがなんだろうが、その活力が本物であり内から湧き上がっていることもまた見ればわかる。おそらくは年に二回ある、彼らの「本領」「真の姿」が発揮できる現場のひとつ、それがコミケというわけなのだろう。迷惑行為と知りながら徹夜をやめることがないのも、それが彼らが彼らで居られる場所だからなのだとすれば理解できなくない。自分らしさを貫くためには他人に迷惑をかけざるをえないという暮らし方を選んでしまったその無邪気さや不器用さのことを考えると、すくなくともこういう顔つきで会場に向かうような徹夜組のひとたちは、べつに因業を抱えてそれをやってるわけでもないんだろうなと思える。なに書いてるのかよくわからなくなってきたのでやめ。