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人類の闇

ザ・ビッグバトル | 060210

子供の頃、身長が低いわけなので大人の鼻の穴がよく見えた。だが鼻の穴の奥はよく見えなかった。記憶の中にある祖父や祖母のイメージの中で、彼らの鼻の穴はどれも真っ黒だ。べつに鼻の中が汚れていたとかいう話ではない。光の加減で、入り口から数ミリ程度までは見えていることもあるが、そこから先はまったく見通せない。そこにあるのは闇だ。

人間の鼻の穴の奥は、よく見えない仕組みになっている。光は一般に上方向から来るし、鼻の穴は下方向に向けて開いていて、しかも鼻の穴は、奥はけっこう広いけど入り口は狭くなってるので、かなりいい条件を揃えないと中まで光が入り込まない。ただ単に下から光を当てるとかではダメ。だから大概の鼻の穴の奥はすごく覗きづらい。成長してくると、他人に向かって「鼻の穴見せて」と頼めるような機会も少なくなっていった。だからおれには「他人の鼻の穴を奥まではっきりと覗くことができた経験」があまりないといえる。

…というようなことを、映画「スウィートホーム」を見た記憶と一緒に思い出した。あれは「心の闇」がキーになる話だった。「握った拳の中にも闇はできるぞ」とかいう台詞(だったと思う)が印象的だった。そのとき、「いや拳なんか握らなくても、鼻の穴の奥に闇はあるよ」と思ったのだ。たった体外から数センチ、いや数ミリ人体内部に座標が移っただけで、真昼の陽光の下にも覗けない暗闇が現出する。自分を構成しているはずの心臓や胃や脳や神経などの大雑把な形と色をおれは一応知っているが、しかしそれらはおれの皮膚の中に厳重に密閉されていて、おれが生きているうちに(基本的には)それらが光を浴びることはない。ということは、いまおれがおれの心臓のことをイメージしても、それはおれにとって赤いものではない。たぶん脈動しているのだろうが、いまその中は真っ暗闇のはずだ。おれの口から入った食い物も、せいぜいのどちんこを通過したあたりからは完全に光の世界から隔絶され、闇の中で消化されてゆくのだろう。だからどうしたという話かといえば、どうもしない。強いていえば、たぶん健康な人間は大概腹黒いとかか。そのことは普段意識されない。