最近の読書
「替天行道 ―北方水滸伝読本」読み終わった。三国志読本もそうだったが、読本てのはあんま読んでおもしろいもんではないなーというか、いや違って、べつにつまらないってわけじゃないんだけど北方三国志にせよ北方水滸伝にせよ、本編のほうがおもしろいのは明らかなんだから、読本のために使うカロリーがあったら本編再読に回すべきかなーという気がしなくもなかったのだが、そうはいいつつも見たことのない情報があったらいやなので一応読んだら結構よかった。各界のひとの評とかについては、同じような内容の繰り返しで読んでてダレがちだったんだけど、「編集者からの手紙」と「いきなり場外乱闘がはじまった。」、そして北方氏×吉川晃司氏の対談と最後の北方氏×山田裕樹氏×大沢在昌氏の対談は格別におもしろかったな。とくに「編集者からの手紙」は、滅多にみれない舞台裏を垣間見るようなかんじ。
会社員であり担当者であり作品の第一感想者でもある、ストーリーの裏側のそのまた裏方はたまた女房役に徹する編集者が、いまだ展開途上の(ということは自分の意見がそこに影響を及ぼしうる、また義務と責任において及ぼさねばならない)作品に対してあれこれと書いた FAX 通信。出版された本を手にとって完成した物語を読んでる読者側からすると、まるでそこに最初から本があり物語があったかのように感じられるし、またそう感じさせるほど自信まんまんに描かれてこそ絵空事は一流なのだという話もあるが、ともかく「そうではない側」、未確定である、ゆるぎなくない段階でのそれに触れるという、無責任ではない立場において書かれたそれは、まるでネットの馬の骨が書いたように軽妙なのだが、しかしもちろんそんなものではまったくない。なにせ北方氏に向けて直接に書かれ、余人の目に触れる予定のない文章であったものを、「半ば強引に」収録してあるわけだから、これは、まるで単なる感想文のようでいながら、力ある文なわけだ。
あと、最後の北方氏×山田裕樹氏×大沢在昌氏の対談は「どっかで見たなーこのかんじ」とか思いつつ読んでいたんだけど、あれだ神林長平「敵は海賊」の会話文体だこれ。なんとなくのほほんとしていてたのしい。なんとなく穴ぐらの中で熊と狸と虎がなかよく対談しているようなビジュアルイメージを想定しつつ読んだ。