matakimika@hatenadiary.jp

WELCOME TO MY HOME PAGE(Fake) ! LINK FREE ! Sorry, Japanese only. 私のホームページへようこそ!

最近の読書

このところ時代小説というと紀元前後のお話ばかりであり、北方謙三氏作品などは世の中がダメなら仕組みをぶち壊して新しい国を作るんだ的な話だったりとかして、これはなんというか非常な荒涼感なわけである。もちろんドサクサまぎれに立ち上がってくる新秩序であるとか、新秩序がぶちあがる程度に広大なドサクサには、なにかしら燃えるものがあるのも事実だが、しかしそのようなものが紛れ込む隙のない、つまり旧秩序が揺るぎなく完成されている時代の、いろいろ抱え込んだ想いはあるにせよそれが枠組みを破壊する意思などとは結びつきようもないような時代に生きるひとの話だって同時に読みたいわけだ。東西問わずインペリアル感とも微妙に違う、ある種の高度さでがんじがらめになりつつも現代ほどには馬鹿らしくない時代のお話。

で、久々に藤沢周平蝉しぐれ」の出番かなと思ったので買ってきた。東北地方の小藩を舞台に展開する美しい思い出と苦難と青春の苦悩と陰謀と剣戟と、そのほかいろいろ。最近で「蝉しぐれ」を買ったのは 2004 年だったと思うが、そのとき買ったぶんも K に譲渡してしまっていまはない(http://d.hatena.ne.jp/matakimika/20040814#p4)。ていうか、あれからもう二年経ってるのか…時間が早すぎる。

で、読んでいるが、北方謙三水滸伝」に負けず劣らずおもしろい。小説というものは、開幕一発でどれくらい美しい情景を読者に思い浮かばせるかで勝負が決まるんじゃーといわんばかりに気合の入った情景描写から、当然のものを当然として描きながら武家社会のありようを活写する筆力。これこれ。なにかもう描いたものも描いてないものも含めた、社会の自らを存在させてしまう圧倒的な力。乱世にはない味わい。しばらくなかった。またいずれ読むだろう。そのときはまた別の本になってるかもしれないが、ともかく今はこれを読もう。