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DISTRICT 9

邦題「第 9 地区」、そういや感想書いてなかった。

  • Youtube:District9 Trailer
  • 同監督による実写 Halo 映像などで確認されていた「現代なりの特撮映像の到達点と着地点」みたいな部分での見応えは充分。青より黄色が印象付けられる、鈍く乾いた映像はじつにオタク向け特撮。AVATAR とは比較にならない。
  • 宇宙人テクノロジの唐突さ、ゲームっぽさは笑うところだ。このような想像力を育んだ文化を咀嚼(租借でもいい)してきた、まさにこれは我々のための映画だ。
  • このての、「どうしようもない僕らに、どうしようもない未来がやってきた」みたいに強調された納得感を伴う 21 世紀を我々は望まなかったけども、拒もうと努力しても来なかった。感慨こそあれど湧いてくる感情はない。宇宙から来る未知との遭遇が先進的ななにかである、という幻想よりは、渡来人が難破船で流れ着く、といった筋合いのほうが歴史的には確かにリアルだと、腑に落ちるようなところもある。
  • SF 的な異種族間文化衝突の問題と差別が絡み合う状況が描かれるが、それらはそこに放り出された個人が彷徨う境界線のアンジュレーションとして描かれる。システムや社会がどうした、というような話ではない。伝統的な「宇宙人映画」としてちゃんと作ってあるだけ、というふうに見ることができるようになっている。
  • 主人公の一人であるヴィカスは、フラットに映画を見ている観客からすれば、当初相当アレな人物として描かれつつも、同時に作中世界におけるそれなりの善良さを備えた人物で、見事だ。その彼が、異星人主人公のクリストファー(…という名前も、MNU により付与された認識名にすぎないのだろう)との様々な交流を経て、文字通りの変化を遂げてゆく、しかしそれがいいとも悪いともいえない、のか、というあたりが大変複雑で、興奮する。
  • 異星人たちの映像的な(たぶん入念に意図された)キモさが、終盤までの展開で「むしろアリだろがんばれ」的なかんじになるのも、王道だけどもよい。連絡船墜落後の展開でクリスの子供がかわいく見えるし、(ヴィカスのピンチを結果的に救うことになる)知性のなさそうな界隈も、仁義はありそうな気がしてくる、ただしそれらはあくまでそのように演出されたものであって、事実そうだとはいえないという保険が、やはり掛かっている。

以下ネタバレ感想。

  • 「渋い映画だなー」と感銘を受けたのが、終盤に、ヴィカスがクリスを救うため自分を犠牲にしたかのように見える展開が、実際には異種族間の信頼とか友情みたいなものではないかもしれないよね、と見れるように作ってあることだ。つまり、あの決断をした時点で、ヴィカスの体はもう半分くらいエイリアン化してしまっており、したがってクリスに対する感情はすでに半分くらい同族へのものであり、種族間の垣根を乗り越えた感情とはいえない。入念に、MNU のラボでの実験で、エイリアン化の初期段階にあったクリスが、「すでに同族(異星人)を攻撃したくなくなっている」というシーンが描かれてあるのだから、この設定オタ的な反応は不当とはいえない。こういう錯覚の余地を残した描き方は、オタとしてなんだか嬉しかった。そんなに簡単な話じゃないよなそりゃ、という。
  • そしてそのうえで、ヴィカスの妻へのプレゼントを作っている(のかもしれない?)異星人を映して本作は終わる。これこそがつまり、完全にエイリアン化した元ヴィカスに、それでも人類に対する愛情の断片のようなものが残っているなら、そこに異種族間交歓の可能性が、僅かに残されているのではないかという希望的な勘繰りの余地ということだ。すべてを超越するものでなければ流通する意味はない、というのが、まあ「内側の外側」にコミュニケーションをとらないわけにはいかない相手が存在する世界には必要だと思うし、それが金でもネコ缶でも愛でも、何でもいいのだけれど、いちばん高性能でいちばんエキサイティングなものが、最終的に選ばれればいいねと思う。
  • クリスが三年後に戻ってくるかどうかは、見終わったあと Y と軽く揉めたが、まあおれはどちらかといえば、クリスは結局(帰還を果たした異星側の事情で)帰ってれこないか、あるいは帰還途上で死んでしまっているか(息子には生きていてほしいが)、または船団と一緒に戻って来ても、すでに元ヴィカスの異星人がどれか判別できなくなっているか(とりあえず「元第 9 地区からの移住組&MNU による難民登録未了」に絞り込めるんだろうが、まともに管理できてるとも思えんしなー)、あるいは異星人側もヴィカスを実験体にしようとしてまた揉めるか、ともかくどのみちアンハッピーエンド派。なんというか、微かな希望を示した個体それ自体は叶わない、というのがオタポエムっぽいと思ってるので