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最近の読書 - 15x24 関連

15x24 1&2 巻読み終わった。おもろいなーこれは。「誰かやっとくべきだが出来そうなひとが少ない」想定の、現物が来たというかんじだから、「予想もしていなかったような種類の衝撃」とかではいまんとこないのだけど、ともかくすごい。

  • 多人数(なんと 15 人(以上?)!)のキャラクタが、ひとつの都市の中をところせましと錯綜し、そのゴチャゴチャ感にも増してスピーディーに展開するストーリー。
  • 各セクションは話者の一人称で語られ、それが組み合わさることで全体像が次第に明らかに。…っていうか、本作ってアレだよな、「チュンソフト「街」みたいに、延々同じ時間同じ場所でのキャラの錯綜を描けばいいわけなんだが、初期の設計が異常に面倒なのと、それでもブレてくる筋道の辻褄合わせ能力が要求されるから、まあループに逃げてひぐらし路線に落とすのが妥当だが、そうするとパクリ言われてへこむ」(http://d.hatena.ne.jp/matakimika/20090719#p1)みたいなことを妄想していたおれにとっては、もっとも理想的な形で剛速球が飛んできたよーなもんで、うれしいサプライズなんだよ。
  • そのうえこれは「携帯の」小説でもある。…というのには、大雑把に三つの意味がある。
    • 主要登場人物のほぼ全員が携帯電話を所持している、というルール設定に真正面から取り組んでいる
      • 「ストーリー構築の都合で携帯電話を排除した架空現代モノ」カテゴリは、すれちがいを演出する必要上携帯電話以降の世界はむずかしいのだ的な言説と抱き合わせでオタ雑談上よく槍玉にあがるんだけど、じゃあそれを裏返して携帯アリで小粋な話をうまいこと作れるのかよといえば、高難度な仕事だろうという話になる。という停滞に対して、電話とメールで網状に複雑化した現代感覚の群体を大状況に投げ込んでやれば、むしろ「携帯電話以降の世界だからこそ生じる大量短間隔の、複雑なすれ違い」が生じるのだ、という回答を本作は示しているように思う。全員が携帯を持つことではじめて可能となるような(携帯がなければ不可能なためそもそも想像されることもなかったような)より高度な「すれ違い」、一千数百万人の中から当日中に一人を探す、アーバン鬼ごっこという仕掛けだ。
    • 多層的情報インフラに絡め取られた個々人の認識の齟齬がストーリーを引っ張る
      • 携帯電話ひとつをとっても「電話」と「メール」の二種類の情報インフラが存在する。ひとつの(理想的な)情報源が共有されているわけではない。互いが本当にはなにを考えて行動しているのかがわからないように、全員「誰が何をどこまで知っているのか」を把握していない。二人でもおもしろく三人でも複雑なそうした状況が、本作では 15 人分。しかもその相互調整を待ってくれない時間の波が、彼らを次へ次へと押し流す。
      • ネットワーク以前と以降みたいな切り口で想定される厄介事回避テクニックは「携帯電話さえなければすれ違いが活かせる→携帯電話ナシで」と一種類だけではなく、逆に「めちゃくちゃ便利にしちゃえば、それはそれで問題起きません」みたいな方法もあったりする。たとえばドラマ「24」では、CTU は街中の監視カメラにアクセス可能だし、膨大なデータの中からあっというまに必要な情報を探し出すしで、「いろんな便利さの複雑な組み合わせによって実現されている豊かさ、がフォローしていない意外に不便で時間のかかる部分」を無視してストーリーを単純化し、またテンポを上げていたりする。携帯電話をはじめとするネットワークのなにが厄介なのかというのは、それがないよりあったほうが圧倒的に便利なくせして、すべてを統べるというほどには便利ではないということだね。本作はその中途半端さにこそ、おもしろさを織り込んでいる。
    • 「作品内ケータイ小説」的な文体の試行
      • 明示されていないので不明な部分も多いが、各チャプターで書かれる文章の時制はバラバラ、で、基本的には過去形がメイン。文語調や口述筆記ぽいのとか、いろいろで、そういうなかに「もしかしたらこのチャプター(=キャラクタの回想)、携帯で入力されてることを想定した文章?」と読めるものが混じっていて、そこいらへんがおもしろい。作品内ケータイ小説っぽさというか。彼らはメールで遣り取りしているから、これも「メールで遣り取りされるお話」なのかもしれない。携帯小説というのは、携帯電話のインターフェースで読まれるだけでなく、携帯電話のインターフェースで書かれるところにも特徴があって、文庫書き下ろしのラノベとは文体も全然違うわけなんだけど、そういう土俵を想定してラノベとしてまとめる、みたいな意図とかもあったりするのかな。…という意味では、これはたいへん携帯端末で読みたくなる小説なんだが、iPhone アプリとかで売ってくれんものかなー。小説リーダに素で流し込むんじゃなくて、ちょっとした読み方の工夫ができるよーになってるとかの…(タイムテーブルが一覧できたり、各キャラクタでソートして読めたり、みたいな)。
  • ネタが豊富。どんどん厄介事が増えていくかんじ。最初はただ「ごく普通の(いろいろな)都市生活者のための」みたいな空間だった物語世界で、誰かの不注意で壜がひっくり返されるたびにジワジワといかがわしいインクが染み出してきて、それぞれのリアリティによって触れるものを操作しようとする。ネットの掲示板、へんな組織、ヤクザのようななにか、古い伝承、オカルト。都市伝説とかも絡んでくるか?最後まで自分なりの全体像を手放さずにいられるか不安だ。

せっかく東京住んでるんだから、ロケ地巡りくらいしたいかんじだな。ある程度巻数が揃ってきたら、やってみよう。

15x24 の物語が東京で進行していた日付は 2005 年 12 月 31 日。その日おれ東京に居なかったんだよね。なので、「あのとき近所でこれやってたのか」感は得られず残念。でもまあ、気分はわかる。連続刊行となるようなので、これからしばらく楽しみがつづく。