女の闘い

うあー風邪ひいた、頭痛い、フラフラする、などと思いながら家に向かって公園の近くを歩いていたら、夜半の東京に大声で罵り合う主婦二人あり。うあーガチだ口喧嘩すげえ馬鹿みたいマジ遠慮ない人格行動全否定、アイデンティティ揺さぶり削る言霊の数々、唱和するマジムカツク、けど穏やかに標準語、ほんと東京の人間は喧嘩するときも標準語だから傍で見ていて可笑しくって仕方ないおれさま大爆笑、PTA だか町内会だかカルチャースクール帰りだかの自転車押してる姿のまま凝固したママさん風の一撃必殺至近距離に対峙するコロシアム真剣勝負、腐女子界隈いうところの般若面かと思いきやこれがまったく違っていっそ晴れやかにさえ見える無表情デスマスク、微動だにせぬ彫像。さすがここが主婦の主婦たる所以静かに激しく燃え上がり吹き上がるマグマ羅刹の家、とぐろ巻く霊的パワー。寝静まる周辺家屋にまばらに灯りだす明かり、収まる様子ない女の闘い。いたたまれず立ち去る背中ごしにもあふれかえる罵詈雑言のエンサイクロペディア、マッハの差異化ゲーム。星を砕く力で殴りあう観音力対消滅。後先ない絶妙のミニマルなパワープレイコンビネーションヘビーローテーション。容赦なく突き刺さる月光真空圧。遠く唸る風の喧騒。しばわんこの和のこころでもなければやっていけぬ。