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江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間

主人公の親父であるところの奇形のひとの怪演が見事。常に安心させないあやしい手つき腰つき、妙に脆そうでいて、おどろおどろしく、狂的で、どこかひょうきんな雰囲気さえ感じさせる。結構こうした不気味演技に関する技能や蓄積がありそうだ。元はパントマイマーかなんかですか。

ちょっとそりゃねーよ的な設定や展開はありつつも、ショッキング映画としてなかなか楽しめる。当時のひとはドキドキしながら見てたんかいな。冒頭では頻繁に(かつ無意味に)おっぱい出しておいて掴みは OK 的な。しかし最後の「ヒュルヒュルヒュル…ドーン」「かあさーん」「ドーン」「ドーン」のシーンは、ちょっと笑ってしまった。前衛的と呼ばれるものの、その十歩手前にあるチープさというか。

終盤で何の脈絡もなくいきなり登場し、誰に頼まれもしないのに真相をズラズラ解明して、親父の拳銃の弾までいつの間にか抜いておく明智小五郎は、ありゃ一体どうかね。笑うべきところだろうと思ったから、素直に笑ったのだが、ああいった脈絡のない明晰さもまた、実はものすごく高度な頽廃の像なのかもしれんなあとか、思ったりもしていた。

あと、ダーレスあたりの描くところのクトゥルーもののような雰囲気(裏日本、寂れた村、呪わしい血筋、異形の住人、といったあたりの符合)も味わえて、こりゃ結構 B 級映画として真面目におもしろいんじゃないかなと思った。