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肉食ってる連中の得点システム

PROJECT GOTHAM(PGR)シリーズのゲームの流れを大雑把にいうと、「レースで優れた走りをすることで Kudos(←クードス、PGR 世界内でのお金に相当する単位)を稼いで、それを消費することでより強い車を獲得し、手に入れた強い車でより高い Kudos をゲットする」ゲームだ。こう書くと GRAN TURISMO(GT)シリーズとあまり変わらないように思えるが、PGR シングルプレイモードでの Kudos 獲得システムは、GT におけるポイント獲得システムとはかなり味わいが違う。

根本的な違いは、GT のポイントが単純にレース着順等のクリア条件に応じた賞金であるのに対して、PGR のポイント(Kudos)計算はもうちょっと複雑で、レース内容、着順、クリア条件に応じたボーナスなどを合計したものということだ。したがって GT の場合最高ポイント獲得のためのレース内容はクリア条件に対して一致していくが(60 点取ればいいなら 60% の力で走ればいい)、PGR のレースは「クリア条件内で、獲得 Kudos を上限一杯まで稼ぐためにはどうすればよいか」といった戦術を練る必要が出てくる(60 点がクリア条件ならその 60 点内で 100% の力を出し切る)。

また PGR シリーズは、同じレースで何度も小銭を稼ぐことができないようになっている。稼いだ Kudos を額面どおり受け取れるのは初回クリア時のみで、二回目以降は以前に出したハイスコアを更新した場合に、その差分の Kudos のみを受け取る仕組み(上回らなければ何ももらえない)。さらに、どれだけ Kudos を稼いでもそのレースのクリア条件を充たさなければ支払われない。

例としては以下のようなかんじ。同じレースを 5 回遊んだとして、

  • 1 回目:クリアできず:1,000 Kusos → 獲得 Kudos なし
  • 2 回目:クリア:2,000 Kudos → 2,000 Kudos ゲット。
  • 3 回目:クリア:1,800 Kudos → 獲得 Kudos なし。
  • 4 回目:クリアできず:5,500 Kudos → 獲得 Kudos なし。
  • 5 回目:クリア:3,200 Kudos → 1,200 Kudos ゲット。

さらに、PGR ではすべてのレースについて、プレイ前にあらかじめ五段階の難度(「鉄」「銅」「銀」「金」「プラチナ」の五つのメダルで表される)を選択する。クリア条件は鉄が最も低く、プラチナが最も高い。条件が厳しければ厳しいほど、それをクリアした時のボーナス Kudos が高い。ということは、

  • 「漠然といいプレイを心がけていれば、いずれ自動的に最高ランクの難度をクリアできる」とはならない(常に「自分が決めたランクに挑戦する」スタイルとなるため、高得点を狙いたければ高いランクへ挑戦するという自覚が必要)。
  • 素晴らしいプレイは、高いランクへの挑戦時であればあるほど、高い Kudos ポイントとなって返ってくる。
    • 「最も高いランク」で「最も素晴らしいプレイ」をした時に、最高の Kudos が獲得できる。
    • (実際には、さらに極まってくると「わざと低いランクでプレイして獲得 Kudos を稼ぎまくる」というのが最上のプレイになっていくが、あれは一種の変態というかスーパープレイであって、そこまで自力で到達できるひとはそう居ないだろう)

大雑把にまとめると PGR と GT の得点システムの違いから、

  • GT には、ゲーム内にプレイヤの努力を評価する仕組みがある。
  • PGR には、ゲーム内にプレイヤの努力を評価する仕組みがない。
  • GT には、ゲーム内にプレイヤの成果に応じた評価基準がない。
  • PGR には、ゲーム内にプレイヤの成果に応じた評価基準がある。

ということができる。GT の場合、レースに勝てばとりあえず内容がどうでもポイントがもらえる。が、どんな勝ち方をしてももらえる額は一定(順位差はあるが、ゲーム内容は問われない)。こういう体系の場合最も強いのは安定持続型のプレイヤとなる。対して PGR の場合、ゲーム内容によってもらえるポイントがかなり変動するうえに同じレースで延々稼げる仕組みがないので、なにはどうあれ出すべきときに最大の結果を出せるプレイヤが優位だ。したがって PGR には「うまいひとの一発勝負に、へたなひとは百回やっても千回やっても勝てない可能性」がある。

率直にいって、ボンクラにやさしいのは GT のほうの得点システムだ。ちょっとずつであれ、やればやっただけなにかは増える。努力が、つまり時間的リソースが、ひいては自宅の電気代やゲーム機本体とかモニタの寿命や、目や指のスジの消耗や、諸々のものが、とりあえずなにがしかゲーム側から評価されるというのはありがたいことだ。だが PGR 以降、というか PGR の前身であるところのDC「MSR」からだったかもしれないが、Kudos にあるような成果主義は、なるほどさすが肉食ってる連中の考え方はシビアだなと、身に染みて感じ入ったりもしているのだ。そこから彼らの正義を導き出す試みも楽しい。

  • 勝てるとわかってる勝負を何度もやるのはゲーム的に無駄(一回完璧に勝てばそれで十分。それでもやるのは「そういう趣味」)。
  • 何回練習しようと、それが成果につながらなければゲーム的に無意味。
  • 努力の処遇はゲーム側で請けるものじゃなくてプレイヤ自身で決めろということ(そこで半端にゲーム側が請けてしまうとモチベーションが曖昧になる)。
  • 実力的に可能と判断するなら最初から高難度にチャレンジすべき(低難度から順番に埋めるのは「そういう趣味」)。
    • 先の例でいうと、一発で 5 回目のプレイができていれば、ほかの 4 戦をやる必要はない。
  • ただしいきなり高難度にチャレンジして、実力が不足していた場合には、得られる対価はゼロ(低い難度でチャレンジしていれば幾らかの Kudos は稼げたかもしれない)。
  • とはいっても低い難度から順番に成果を出すというような方法は、いずれ実力をつけて記録を更新するたびに無意味化する(時限の価値)。
  • ランク選択画面は、自分の実力から引き出せるパフォーマンスとクリア条件の読み合い(「現在の自分にできる最高のパフォーマンスはどの難度に相当するか」)。
  • 無駄を省きたければ、自分の実力をなるべく正確に把握しておくことが必要。それを基準にした目標設定が成果につながる。
  • どういう遊び方を選ぶかはプレイヤが決めろというスタンス(遊び方の選択肢は自覚と実力と趣味によって自動的に絞られる)。
  • PGR は「チャレンジした結果としての成功」のみを評価し、それ以外のものはプレイヤ自身が請けるしかない、なぜならすべての行為と結果はプレイヤに帰するから(権利と責任の一致によって表現される自由感)。

一見して「そんな世界観では弱者必死ではないか」となるが、そうならない。どうせ世の中弱者のほうが多いのだ。数十億という人間があらゆる局面で見出してきた合致点を、PGR 上でみつけられないわけがない。要は「チャレンジは善」が彼方に掲げられ、しかし「自分の実力」という現実が手前にひろがり、ではこの地平の手前でどう遊んでいくかというフィールドの規定を、各人が各様に探しつづければよい。実力に見合った成功は当然、見合わないチャレンジは失敗、またはうっかり成功して幸運、まさかの失敗もあるだろう。世界法則があるかのように平均的なるものは幻視できるが、ほんとはそんなものはない。能力とか運とか偶然とかてんでバラバラ。どんなやつだってどこかには居る。ゲームがあり、他人も居て、居るが他人で、自分じゃないので、じゃあ自分がどうでありどうなっていくのかは自分の度量でどうにかしろと。するようにやり、なるようになっていくありさまを受け入れて納得しつつ、最終的にそれを楽しめと。とてもわかりやすい。GT はそのへんが曖昧でやさしいが、それゆえに快楽原則をわかりづらくすることがある。自分のための努力をゲーム側が評価するので、まるでゲームをゲームのために遊んでいるかのような気分になるという錯覚。なんであれ楽しむことは自由だ。

余談だが、当然それぞれこうしたゲームデザインになっているため、

  • GT の場合獲得ポイントは、デザイン上では上限がない(仕様上ではあるだろうけど)
  • PGR の場合獲得ポイントは、デザイン上である程度「たぶん最高まで稼げてこのへんだろう」と上限を予測することが可能

となる。GT は無限の時間を費やせば無免許初心者カップでも永遠に金を稼げるが、PGR では「ポイント獲得機会=用意されているレース数」だからだ。理論値の足し算。ところで「最終的にはゲームバランスをプレイヤが破壊できる(レベル最大時にラスボスを瞬殺できるか否か)」は家庭用機 RPG の必須要件化してるのかな。「イース」とかの時代には、まだそういうわけでもなかったと思うけど。その意味、GT の RPG 性は、イース当時のそれを拡張していったものといえるかもしれないな。

  • (補足)PGR も 2 になって Live 対戦を含むとまったく様相は変わり、シングルプレイ時の Kudos と別に Live 対戦で得られる Kudos も要素に入ってくる。こちらはやればやっただけ獲得できるので、PGR2 は Live 対戦やってるぶんには GT 同様の得点システムといえる(折衷っていうかいいとこ取りというか)。まあ Live 対戦での Kudos 獲得効率はあまりよくないので、結局シングルプレイもがんばらないといけないんだけど。