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もののけ姫と世界観オタ

コミックマーケット閉場前041230 | 3 o

取り急ぎ宮崎アニメ感想シリーズ。ちょっと脱線したところで長くなってしまったので「取り急ぎ」感は低いかも。

  • やはりおれの場合どう考えても宮崎氏作品中いちばん好きなのは「もののけ姫」だ。いちばんたのしい。いちばんおもしろがれる。ゆえにいちばん好きだろうといえる。しかし、たのしくておもしろいものをそれだからといって即座に好きと言っていいのかという懸念はある。楽しくておもしろいものが好きといえるなら、好きであるという状態の固有性が疑わしくなるからだ。好きである必要はないかもしれない。まあともかく、おれに唯一購入可能性のある宮崎氏作品の DVD は、やはりこれ一本だ。次点で「風の谷のナウシカ」。まだ買っていない。いずれ買うつもりはある。
    • というか、宮崎氏作品でいちばん好きなのが「もののけ姫」だというためには、あらかじめもののけ姫を踏まえてナウシカを見てみるべきだと思っているのだが、実はもののけ以降にナウシカを見たことが一度もない。なのでナウシカ見たらやっぱりナウシカだったということになる可能性がある。だからもののけが一番というのは八割方の想定で、確証ではない。ナウシカの場合漫画版のほうがなにをどう考えてもおもしろいため、アニメ版の出来について実はあまりまじめに検証してみたことがないのかもしれない。いちおう劇場公開時に見た。「ジョーズ 3」(立体メガネ版)と同時上映だったと思う。以降 TV で機会があるたび何度か見た。いま見るとどう見えるのかについての興味は結構あり、いずれ見てみるつもりではある。
    • 「指輪世界の第二日記」04/11/24 付(http://d.hatena.ne.jp/ityou/20041124)の映画観上のナウシカはかなり魅力的で、なるほどあの映画をそれに近く見ることが、いまならおれにもできるかもしれないと思っているというのもある。世界観の違う人間同士が、同じ映画観を共有することはないのだろうけど。
  • コアな宮崎氏作品オタのひとの言論などをネットで追っていると、本作の評価は一様に低く、そこがいまひとつピンと来ない。どうもわからん。なんとなくはわかる。観方が異なっているのだなという点ははっきりしている。おれはあまり宮崎氏作品の文脈を読んでないのだろう。そこまでの個人に対する興味はない。
    • おれは(オタとして)宮崎駿氏作品に育てられた覚えがない。富野由悠季氏についてもそう。押井守氏についても同様。そのほか、結局おれはアニメは好きだったがアニメに育てられた覚えが、考えてみればないかもしれない。ステップアップしていく過程の、節目にあたるようなイベントはことごとくアニメとタイミングを外している。愛憎を高度な心とするなら、アニメを憎めないおれはアニメを愛せないのかもなと思った。いやそんなことがあるか。あと愛と憎を対とするなら恋の対語はなにかしら。嫉妬かな。ありそう。愛憎よりは簡単そうだから、恋や嫉妬ならおれにもできそう。
  • ともかくおれが「もののけ姫」をおもしろがっている根幹は、この映画にある「世界観チャンバラもの」としての出来の細やかさにあるという点ははっきりしている。おれはそれこそが好きだから、もののけ姫がいちばん好きだ。数年前まではこの評価軸が曖昧だったため漠然としかいえなかったが、LOTR TTT を見たことではっきりした。以前におれはこれが好きなんじゃないかなと漠然と認識していたのは「西洋チャンバラもの」だったのだが、どうもこれべつにそういうわけでもなくて「エスニックチャンバラもの」でも全然問題なく、じゃあこれはやはり「世界観チャンバラもの」なのだろうと。
    • この「世界観チャンバラもの」を踏まえたうえで観たのだなあと自覚している作品例を挙げると、
      • THE LORD OF THE RINGS - THE FELLOWSHIP OF THE RING
        • 世界観度「高」:トールキン氏原作としてはちょっと首を傾げつつも、ピータージャクソン氏(及び実世界実写)作品としての世界観は十二分に感じ取れる。メジャー作品であれば作品内価値観が実時代(現代)価値観に迎合せざるをえないところ、かなり巧妙かつ現実的に折り合われており好感。とりあえずビルボとガンダルフが劇中堂々と煙草吸ってたのは好印象(←このところ数年ばかり、悪役以外で煙草吸ってる映画登場人物とか見たことなかったのでそこが不安だった)。
      • THE LORD OF THE RINGS - THE TWO TOWERS
        • 世界観度「高」:世界観度では前作よりちょっと実価値観に寄ってきた印象だったけど(←観賞当時の気分など、おれ自身にこびりついてる垢をこそぎ落とせば印象変わるかも)、そのぶんチャンバラ分がドバドバ入ってきて(「今度は戦争だ」感っていうか)これはこれでジュルリ。ワーグとの少数騎馬戦、絶望的な篭城戦の大迫力。
      • THE LORD OF THE RINGS - THE RETURN OF THE KING
        • 世界観度「高」:まとめの三作目とあって、二作目よりもさらに実価値観への擦り寄りが感じられ、加えてユニーク要素も大概は出尽くたこともあって、もはや観ていてとりたてたユニーク世界観というものはないのだが、それゆえに「微妙に違うはずなのに違和感があんまりない」という感覚を楽しむことのできる、数少ない大作映画として高評価。チャンバラというよりはもう完全に戦争、かと思いきや大篭城に大合戦をやりつつその斜め上からファンタスティック要素をたたきつけてくる世界観的ダイナミズム。ちょっと俗っぽすぎるきらいのある映像化解釈も、笑って受け止められる達成度感。
      • もののけ姫
        • 世界観度「高」:全般にわたってユニークな世界観が楽しめる。日本っぽいけどちょっと違うようなかんじの精緻な描写。日常が非常に細やかで涎が止まらん。チャンバラはファンタスティックでそのギャップも素敵。やっぱ超人バトルでも常人バトルでもない微妙な融合、物理法則を自在にはできないが現実には不可能の 1.4 倍くらいの能力者同士の激闘は熱い。おれが最初にそのことに気付いたのは藤原カムイ「雷火」の神仙術使い同士の戦いだったようなきがする。すごいやつだが万能ではないかんじ。
      • LAST SAMURAI
        • 世界観度「高」:全般にわたってユニークな世界観が楽しめる。チャンバラ度は低いが、こちらも日常や心のふれあいの描写が細かい。合戦は緑色が清潔すぎてちょっと残念。あとフィールドに四角感が高すぎてゲームっぽいというか。単純判定では世界観度「中」だが、SAMURAI BONUS を加点して「高」。
      • GRADIATOR
        • 世界観度「低」:冒頭の合戦のカタパルト描写に尽きる。価値観が現代寄りなのでそこが世界観オタ的にはやや難。当時の人間の善悪の判断などが、現代人と似てたということでもまあべつにいいと思うんだけどそれでもちょっとは違うかんじにしてくれないと世界観オタ的に重要な「微ギャップの妙」がない。
  • アシタカの男っぷり、サンのもののけ姫っぷり、エボシの御前っぷり、神々の神っぷり、ジコ坊の生臭っぷりなど、いずれにも筋の通った味わいがある。ここまで書いておいてなんだが、それがオリジンであるとかユニークであるとかは、実はあまり重要ではない。「それが制作者により発想され、浮かんだ発想が制作者内での解釈を経て、最終的に映像に出力されている感覚」が感じ取れればいい。だから「異世界もの」ではなく「世界観もの」。派閥としては設定オタからの分派になるのだろう。世界観オタ。ちゃんと考えつつ作ってるかんじっていうか。どういうものをどう描くことで何の存在を背景に配そうとしているか。ドキュメンタリではない映像作品にはいずれ限界があるのが当然なので、成果物自体に「世界としての完璧さ」を求めることはしない。いまとは違う時代のここではない場所を描くのだから、それゆえになにかが違ってきて、ではそこでなにが違えばいまでもここでもないところのドラマになりうるのか、フィルムと制作者の中間にある世界観をめぐる戦いを思い描きながら咀嚼するのが愉快なのだ。そこに人間の活躍やドラマがあることは疑いない。
    • 一例を挙げれば、終盤でジコ坊が転がり落ちる首桶を全身で受け止めようと岩の上に立ちはだかるシーンの「オウ!」という掛け声、あれが漢字の「応!」として聴こえたのは非常に愉快な体験だった。
  • 設定オタの原理に照らせば、世界が確固として存在するためには、そこにあるものすべてに相応の理由がなければならない(理由なく存在するものについてなら、ちゃんと「理由を設けない」ことが必要だ)。だが作品上でそれらすべてを挙げていくことは、よっぽど実験的な作品でもなければ不可能だし、第一それらの由緒の正しさを観衆に証明可能であること自体が、作品世界の設定上で合理となる場合もあまりないと思う。だから場合によって資料は物語となり、作品は副産物となる。まあそれはそれでいい。いいが、そっちだけではなくて解釈の過程もおもしろがりたい。筋道に沿ってアクションを起こしリアクションを返すキャラクタたちや構造体の、生み出すドラマの各仕草各要素に適切な理由が封じ込められてあればいい。その筋道の集約がある程度の矛盾を孕みつつもそれなりの整然さをもって形を成したときの快楽、そこにはライブ感にも似た妙がある。
  • というかんじの嗜好のうえで、「もののけ姫」は宮崎氏作品の中ではもっとも高く評価できるのではないかなーというか。