ぺとぺとさん
ネタは悪くないはずなんけども。
- 田舎町
- グローバルな差別問題のローカルへの落とし込み
- ちょっとした世界観闘争
- 妖怪萌え
- 妖怪 GOD である水木しげる氏へのリスペクトも十分
ある程度勝ったも同然のおはなしで、とはいえこれは必勝ではあるけど大勝の可能性はあまりない布陣ともいえて、ということは抑えめの文調でほんわかひんやりノラリクラリと一冊ぶん語り終わっていっていただければ安心のタイトルかなと思ったんだけど、これがうまく腑に落ちてくれずもどかしい。巻頭の漫画からおはなしがスタートしている、本に目次がない等のやりくちも失敗してないとは思うけど、いまひとつおれを物語へ引き込むことには成功しておらず、そういった部分の魅力感が得られない。
問題点。
- 説明が少ない。
- この話は、作者のひとのけっこうな分量の愛、またはたくさんの計算に基づいて丹念に設計された世界のうえに成立しているんじゃないかと思える。舞台にはそれなりのディテールがあり、人物にもそれぞれに拠って立つ風景があるかんじ。だけどもそうしたところがほとんど説明されない。ジャンルがライトノベルだからという理由なのかもしれない(ト書き少なく台詞多めでみたいな縛りとか)。これはやりづらい。どうなるかといえば、
- 個々の感情の動きがわかりづらい
- それぞれのキャラクタが、それなりの感情にもとづいた行動を取るんだけど、その感情の前提となる部分が説明されないか、または順番バラバラにヒントだけちりばめてあるかんじで、てきとうに読み流していると追えなくなる。ただこれは意図的にそうしてあるっぽいきもするというか、そういう手法なんだろう。何回か丹念に読むのが前提。
- 「なぜこのキャラクタがここでこういう行動をするのか」。読者にかかる負荷が高い。世界の完成度は読者(外側)にではなく世界自体(内側)に対して閉じてゆく印象。取っ掛かりがない。なくても深読むのがオタというものだが、それは読者同士でこそ通用する理屈というものだし…萌え?
- 話の流れとしては、最後のエピソードあたりに向けてキャラクタの感情がそれなりに収束していっているようなんだけど、ほんとにそうなのか確信が持てない(わからないので)。
- 人間側のキャラクタが薄い
- 結局なにがどうなったのか理解しづらい
- 物語が転がり始めたそもそもの動機の部分(アンバランスを設計された前提)がよくわからないので、物語が転がった結果としての「おしまい」の位置の、そのバランスが、結局よくなったのか悪くなったのかわかりづらい。よくはなったんだろうけどたぶんみたいな。べつになにも変わってないといえばいえないこともなく、それで構わないお話といえばそうも言えるのか。
というようなかんじの感想になる。
テーマ状のものが散逸していて(キャラクタにせよエピソードにせよ)、とはいえ一本のお話だから体裁は整えねばならず、しかし整理がつかず、世界情報のボリュームに対して紙面が少なく、または最適なメディアではなかったために(なんか大判の小説+イラスト+設定集+コラムみたいなムック本として出してれば一番いい表現方法だったのではないかと思った)、半端な不満足感として受け取ってしまっているかんじというか。うーん、地域社会を描くにはライトノベルの土俵は狭すぎるのか。机の周囲 3m で十分だとは思わないけど。おれの中での、たぶん「キャラもの」じゃなくて「場もの」だよなーというあたりから認識がズレてんのかも。