路地裏のスーパーカー
近所というほど近いわけではないところに、ポルシェとかフェラーリとか、なんかとにかく洋物のスーパーなかんじの車が通る路地裏がある。なんでスーパーカーがそんなとこ走ってんのか理由は不明。界隈に外車のディーラーがないわけではないけどそこで売ってるかんじの車ではないし、はたまた近所にオーナーがいて帰りがけにそこを通らざるをえないというようなふうかというとそうでもなく、大通りから路地裏に入ってまた大通りへ抜けていく車がほとんどであり、加えてべつに抜け道とか近道というわけでもない。離合もできそうにないくらい細いごくふつうの路地裏。
スーパーカーというものは、なにしろスーパーな車であるから、日本の公道にはオーバースペックな存在で、その本領を発揮できる（全力でぶっとばせる）場所などはもともとほとんどないわけだが、これがさらに路地裏ともなるとこれぞまさしく牙をもがれた獣というか、ジョルンジョルンボロボロボロボロと歯噛みするようなしょぼくれた唸り声をあげながら徐行するそのありさまは、おもしろ悲しくて笑える。
で、まあ、ともかくそんなわけで、その道を通りがかったときなどには、たまに公道ヒエラルキーの逆転現象を見ることができる。「ポルシェのアタマをおさえつけたままゴールする買い物帰りのおばあちゃん」とか「フェラーリをぶっちぎって走り去るママチャリおちゃばん」とか。徐行しかやりようがないうえに、突起物や横道を警戒せざるをえない車よりのんびり自転車を漕いでいったほうが速いのだ。
