第15回CGアニメコンテスト入選作上映会
昨日。結局 CGA コン入選作上映会行ったよ。もうけっこう遅くなってから行ったので休憩時間から入った。
行っといてよかったと言えた。一昨年応募してたイタリア人コンビがまた応募してたし、後半に上映された佳作・入賞作はかなり粒揃いの出来だったと思う。休憩時間も楽しかったし。
途中からしか見てないので見たやつだけ簡単な感想を付記。
- 入選作(未見につきリストのみ)
- 佳作
- 奇志戒聖「GO TO THE EARTH」
- 25分の上映時間はちょっと長いかなと思ったが密度が薄いわけではない(カットを削るというよりシーンを整理するべきだと思った)。間の作り方が基本に忠実ではずれてないけど斬新さには欠けるかんじで、尺が長めになってるのはそのへんにも原因があると思う。
- やりたいことをやってるかんじがして好感が持てるし、話もけっこうおもしろかった。在野でこういうひとがたくさんがんばってくれているとたのしい。
- S虎T & タナカウナギ「ひげ蛙と小兎忍者」
- ちょっと笑った。尺の短さも好感触。
- あとこういうコンテストだと使ってるツールごとの画質感の違いがモロに出るのでそのへんもおもしろさだなと思った。
- 荒船泰廣「風雲猫忍録」
- うまい部分だけ上手に吸収してるなあというかんじ。動画好きで映像を作るとき、どうやっても出てしまいがちなアク(←制作者として食い止め難い最後の一歩にある業)のようなものをあまり感じさせない。感じさせないとはいってもそれは画面に明らかに出ているが、そうしたチープな部分を照れず隠さずうまく昇華してみせることで個性に変調することに成功しているかんじがした。
- 将来性にも期待しての佳作とのことだったが、納得。
- Ondaonirica : Daniele Lunghini & Diego Zuelli「Little Numba」
- うまい。映像は手段に過ぎないとわかりきっているかんじの洗練度。持っているセンスを表現するために画面を構築しているかんじ。制作における指と脳、戦術と戦略それぞれの立場と権限がわかりやすく絶対。
- 作品に表現されているその個性は、解釈者または観測者としてのそれに過ぎないとも思ったのでこれが佳作どまりなのは納得だけど(佳作以上に入るためにはこの作品はそこから一歩踏み出すか解脱してみせないとだめだと思う)、逆に佳作の中では(作者が外国人であるという点を差し引いても)群を抜いて異質で高品位。「見事な佳作」。ほかの作品の作者がまったく表現できていない(または考えの及んでいない)配慮または発想を、この作者たちはやっている。
- あと、今回おれが見たなかでは唯一タテノリ可能だったムービー。それも大事だな。
- 赤木沙英子「しももも」
- 間の切り方がうまいと思った。それに尽きる。コンテの時点で勝利を確定させ、作画で勝利を完全なものにしている。こういうのってなかなか後天的にはみにつかないよな。
- 奇志戒聖「GO TO THE EARTH」
- 入賞
- 美術賞:
- エンターテインメント賞:
- みかげたゆた & せいけゆきお「デカデカ」
- これがエンターテインメント賞受賞っていうのにはちょっと疑問が残る。
- ギャラリーの反応もおれが見たなかでは一番よくなかった。確かに作者のひとの技量は疑いないし、なんといってもバキバキな色合いでちゃんとへんじゃない画面を作るっていうことはむずかしいわけだから、それだけでも大したことだとは思うんだけど(ストーリーとか演出とかは後からどうとでもなるとしても色合いに関してだけは、先天的な感性が必要な分野と思う。色に対する感受性を努力によってカバーしようとするひとは、大抵(たとえば新海誠氏の作品にみられるような)無難な色具合の画面に落ち着いていき、キツめのあぶなそうな色の単純な組み合わせなどはどうしても避けるようになっていくと思うし)。
- うーん、しかし、これよりいいのなかったのかな。たとえば小小作品がおもしろいのは、あれがFlash上でバキバキ動くからであって、もともとなんでもできるムービー形式で映画とかゲームっぽいモーションをやってみてもあんまり新鮮味はないと思うんだけどなあ。おれが感じることのできない、またはおれが乗り遅れた、なにか「こういう作品のおもしろさを評価する流れ」みたいなものがあるのかなと逆に不安になってしまった。
- みかげたゆた & せいけゆきお「デカデカ」
- 作品賞:
- 吉浦康裕「水のカタチ」
- 丁寧な小品というかんじだった。絵柄も嫌味がない(ちょっと「プラネテス」のひとっぽいかんじ)。視聴者の目を飽きさせまいとする努力にくどさがなく、細やかで行き届いており、粗を出さない(粗と言える粗はコーヒーを淹れるシーンでの質感くらいか)。これのDVDがあったらサクっと買って帰ってもいいかなと思った。「見るひとに嫌いになられるような要素」がほとんどないかんじ。
- 吉浦康裕「水のカタチ」
一番たのしかったのは休憩時間かな。
余談になるけど、CGA コンテストはあれはあれで独特のテンションを持ちつつ流動しているコンテストだと思うので、そこで入選するために効果的な方向性っていうものがやはりあると思う。入選したひとのコメントなどでも、毎年の傾向を見ながら「そろそろこんなかんじのものがウケるかなと思って作ってみました」みたいなのとかがあって、あーやっぱし応募者のひとも一応分析とかしてんだなと思った。というか、そういうひとも居る中で「他人のことなんざ知ったこっちゃねえけどとりあえずおれの作りたいものができたので応募してみました」みたいなものがゴロンと混じるあたりがまたおもしろいわけだ。
あとなんかおれちょっと気になってるんだけど、CGA コンテストで評価されがちなストーリーて、妙に月刊アフタヌーンあたりに載ってそうな漫画のそれっぽいかんじがする(過去の入選作などを鑑賞する機会があったときなどにそういう作品にでくわすと、失礼ながら「あーまたアフタヌーン系ムービーか」とか思ってしまう)。単に短編とか中編のアマチュアムービー制作でストーリーを考えるような場合に適しているのがあの毛色のものというだけで、CGA コンテスト固有の特徴ってわけじゃないのかもしれないけど。
逆にそのへんを見込んで、DoGA とアフタヌーン編集部でタイアップ企画とかやったらけっこういいかんじのものができるんじゃないかなあと思うんだけどなっていうか。