matakimika@hatenadiary.jp

WELCOME TO MY HOME PAGE(Fake) ! LINK FREE ! Sorry, Japanese only. 私のホームページへようこそ!

死の棘

ドール041227A | 4 of 4

読み終えた。読み終えた…という以上の感想が出てこない。

とにかく読んでて空気が重たい、視線が字を滑って何度も同じ行を読み返したがそうならなくても全然進んでいる気がしない、というか確実に進んではいるのだがだんだん「じゃあ進むとは何だ」という疑念が沸いてくる、一冊に二週間弱かかったのは、最近読書時間が取れなかったからというのもあるが、ひとつひとつ確かめようとしながらなにも確かめられないまま進んでいくしかないというトシオの暮らしと、おれの読書体験の像が重なるためだ。

延々と積み重ね崩し繰り返される日々、日常は崩壊しようともやはり日常と呼ぶしかない。退屈なほど確かだった現実は夏の終わりを境になにもかも不確かになってゆき、自分で自分と思っていたものさえあやふやになり、宙を落下しているのか沼に沈んでいるのか石の中に居るのか、フィードバックは信用に値しなくなり、それでも生きていく以上、なにかを確かめようともがく行為を止めることはできない。五感を失ったかのような灰色の家庭の中でひとつだけ確かだったのはほとんど配偶者の存在自体に依拠するようなか細い絆。それだけを確かめ合うため互いに傷つき疲れ果てる毎日。機能を喪失しても頼るしかない本能。人間でなくなってしまわないために錯乱するしかない。なるほどこれはどうしようもなく愛だ。その健全さに生かされ狂っていく二人。トシオとミホは美しい。