買えない漫画
買えない漫画がある。べつにレア本というわけでもなくそのへんの本屋でも売ってるはずだし、金を支払うぶんにはやぶさかでない。しかし本屋で探しても見つけることができない。こういう漫画は、発見できたとしても、しばらく悩んで、やっぱり買わないと決めてしまうだろうと漠然と思う。それは意思による決定だが、意思の望むところとは別の反応だろう。
読むのは構わない、だがその本を私有するのはやりすぎだ。または、持ってしまうと、たぶんおれはそれを読まない。そういう漫画。その判断の手間さえ惜しい。ゆえにおれの無意識がおれの有意識をその本に辿り着けなくする。おれにその本が見えないのは、だから一種の(内側に向けての)防性攻壁なのだろう。脳は目が見たものを正確に伝えない。風景から有意を抽出しなければおれにとってそれは風景の一部だ。認識できなければそこにないのと同じこと。こんなところで護身完成。しかしそれでも探さねばならないのがオタのつらいところよ。おれの場合、最近だと、木尾士目「げんしけん」が買えない。読んでみたい、読もう、とは思ってるんだけど、どうやら細胞の総意はまだ得られていないようだ。
そういえば福本伸行「最強伝説黒沢」も買えない漫画だな。1巻くらいは読んでみたいんだけど。
あと福島聡「少年少女」の場合は、これと根は一緒だけど対応だけが違って、買えない漫画ではなく、買わない漫画だ。意識的な処理で済ませるのが最もラクと結論したらしい。買わない漫画であることに気付かずに買ってしまっていたので、ひとにあげることで状況を改善した。