ヴァニラとノーマッドは百合
ノーマッドが男に見えなかった。
人格ではあるが、男でない、じゃあ女か?それは…どうなのよとあちこち脱線しながら論理を編み出そうとしてみたが、どうにも素養がなく、1年以上保留していた問題。これも随分前の話になってしまうが、Tさんには話したことがあった。
- 誘導ミサイルに搭載する人工知能が人格を持つなら、その人格には当然性別があるはず。
- そしてノーマッドの人工知能は少女漫画ちっくな「恋する乙女」型(つまり女性)に違いない。
- 「うる星やつら」の諸星あたるを見よ!あっちもいいこっちもいいムフフデヘヘと節操がない。あんな体たらくでは目標を定めたところでまっすぐ飛ぶかどうかも怪しいものだ。それになにより諸星あたるだ。諸星に当たってどうする。手当たり次第ぶっこわせばいいってもんじゃない。目標(ほし)と定めたひとつを破壊するのがミサイルの機能というものだ、誤爆などあってはならない。
- 誘導ミサイルの人工知能として男性型が不適な理由はまだある。男というものはだいたい土壇場になって迷う。その弱さもまた使いどころさえわきまえれば(たとえば艦の火器管制システムとかそういう部署でなら)活かせもするだろうが、しかしこの場合は一瞬の気の迷いも許されない最前線も最先鋒、ミサイル誘導システムの話だ。そこでの迷いはただ単に性能を低下させる!さあて覚悟も決まった突っ込むぜえーー…ってああちょっと待ったあれもこれもそういえばあっちも…、なんてやってるうちに回避されて必中ならずだ。
- 目標をこれと定めたら一直線、チャフやデコイをどれだけ撒き散らされようともほとんど直感的に「あの人」の波動を嗅ぎ分けて一撃必中、ハートを打ち抜く。盲目のようでいながらただ一点だけを刮目している恋する乙女型は適任だ。恋する乙女、ヒロインになるほどの思い込み、視野の狭さ、シンプルな衝動、幼稚な未来予想図を備えたそれは、最も恐るべきミサイルになるだろう。
- 本能(それは本能ではなく、実際にはパイロットや管制官の作為なのだが、彼女がそれを知ることはない、彼女の知りえる世界はとても小さく短い)によって刷り込まれた運命のひと。目覚めくびきから解き放たれ全力で駆ける。「届けこの想い」…そしてもろともに爆散する。その一瞬に彼女の短い生が凝縮し、そして死を永遠に昇華するのだ。
- 彼女は戦争を知るまい。生も死も。人間がミサイルに期待するのは目標の破壊、それだけだからだ。そのために彼女が自分や世界、そして「あのひと」の本当の意味を知っておく必要はない…。
- というわけで未来のミサイル工場では、ミサイル搭載用AIの胎内教育にベタベタの少女漫画データなどを採用しているのに違いない。それもたぶん短編とか読みきりとかだな(ミサイルの人生なんてものは短編で済ませるに越したことはないから長編モノは不適)。
というような乙女ミサイルフェティシズムのような雑考を経て、なにはともあれおれ的にノーマッドは女性型ということに決まったが、まあノーマッドはそこからちょっとズレたキャラクタなわけだ。なにしろ、ミサイルとしての本分を外れてぬいぐるみに収まって、今はヴァニラに抱かれている。彼女は自身の「恋する乙女」を喪失しているのだ。
さて、この「喪失したノーマッド」とヴァニラという正体の掴めないキャラクタの間にいかなる関係がありうるか、というあたりで止まっている。まあどっちも女だからヘテロではない、ぬいぐるみと少女だから(仮に)セクシャルになることがあったとしてもポルノにはなるまい、とすれば、まあ、百合か。くらいにしか頭が回らん。うーん。
-
ああ、つーかちがうか。ベタベタの少女漫画だと最後に男のほうからこれ以上ないくらい都合のいいアプローチがあるわけだしな。逆だ逆、ラブコメヒロインってことでいいか。諸星あたるを例にしたんだったらまさしくラムが適当だ。衝角(ラム)、うむ。