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最近の読書

「いたいけな主人」読み終わった。今回も大変おもしろかった。

読んでて手に汗を握らないかわりに胃にもたれる本だった。ラノベってこのへんまではアリなんだ?という程度にはエロ的な表現も頻出するけど、そこは特に気にならない。男子向けメディアで「エロ」といえば行為のことで、ようするに「ある人物が状況に沿ってエロくなったりエロくなくなったりする」というのが一般的な処理なのだが、本作の場合、行為は状況に左右されつつも、基本的にはそこに拘わらない主体のようなものの交歓のほうに要点があるので、つまりー、ここで描かれているのはエロというよりは「変態」に近い、といえる(←性的存在は状況次第でエロくもエロくなくもなるが、性的存在それ自体でなくなる瞬間は決してなく、したがってすべてエロいともすべてエロくないともいえる)。ふつうのエロは単に「あーエロいわけね、はいはい」と小手先で相手をすればいいんだが、変態というのは主体性のある他者ということだから、相手しようと思ったらちゃんと向き合わないといけなくて、疲れる。一人でも大変なのに、本作は変態まみれだから、ふつうの読書の何倍もカロリーを使う。あとまあこの流れ上でいう「変態」というのは別にマイナーな存在ではないばかりか世の中の大半を含んでいるはずなので、「おれと彼らが生まれ持った心の基礎形は違うと思っているが、じつは同じなのだと仮定したときに湧き上がる感情は困惑より不安に近い」とか「極端に見える彼女たちと自分との差は何であろうか」とか考え込みはじめるとヤバい。罠にはまりかけている。

もとが web 連載だからか文庫で読むと展開が早くて、話がポンポン進む。そのスピード感に乗って登場人物たちのむきだしの愛情がめくるめく万華鏡のようになって胃もたれを起こす。前作と並んでこれもまた愛の話で、でもやはり愛が何なのかは自明のものとして描かれない。それを理解できないおれのような人間にとってこの描き方は挑発で、理解できると念じる者にとっては至福なのかもしれない。しかしそういうものを突き破って感じられる作者の意志みたいなものが、なんか本作においては強烈だったような気がした。中里氏のほかの作品には、それほど圧力を受けなかったんだけど。読者へ向けての意志なのかどうかは、よくわからん。

とかそういうのは置いといて、この本がラノベづらして書店に並ぶってのは結構えらいことだなーと思った。ラノベってのは中高生とかが読むわけだろう。そういう読者へ向けて「本にすらこの程度のことは書いてある。だからおまえらはもっとやれ」と挑んでいるように思える。中学生もひとを愛していいのだと。